骨粗鬆症について解説

高齢者に多く見られる骨格系・筋系の疾患には、日常生活に支障をきたす可能性があるものがあります。今回はその中でも「骨粗鬆症」に焦点を当てて、その概要、原因、症状、治療について詳しく解説します。
2014年の厚生労働省の「患者調査」によれば、骨粗鬆症は日本国内において、潜在的に存在する人々を含めて約54万4000人の方々に影響を及ぼしています。性別による発症傾向を見ると、女性では特に50歳代に、一方で男性では60歳代以降に多く発症することが確認されています。そのため、性別において女性が発症率が高い傾向にあります。
世界保健機関(WHO)の定義によれば、骨粗鬆症は「骨の低骨量と微細構造の異常を特徴とし、骨が脆弱になり、骨折の危険性が増大する疾患」とされています。この疾患は「原発性骨粗鬆症」と「続発性骨粗鬆症」の2つに分類され、それぞれ異なる原因や発症メカニズムを持っています。


骨粗鬆症(Osteoporosis)とは?

骨粗鬆症は、骨密度が低下し、骨が脆くなる疾患です。これにより、骨折のリスクが増加し、特に高齢者に多く見られます。骨粗鬆症の骨は、正常な骨に比べて空洞が増え、スポンジのようになります。


~骨粗鬆症の原因~

原発性骨粗鬆症において、女性は閉経を迎えると女性ホルモンであるエストロゲンが減少します。このホルモンの減少により、女性は男性よりも早く骨量(骨密度)が減少し、骨組織内に空洞が増え、骨が脆くなります。さらに、高齢になると骨の代謝が低下し、カルシウム、たんぱく質、ビタミンDなどの栄養素の摂取量が減少します。また、運動量の低下により、カルシウムの吸収に必要なビタミンDの生成も減少します。これらの理由から、女性は骨の脆弱性が増大し、骨粗鬆症の発症リスクが高まります。

骨粗鬆症の主な原因は、骨の代謝が不均衡になることです。これには以下の要因が影響します

  • 加齢
    年齢が上がると、骨の密度が減少します。
  • 遺伝
    遺伝的要因も骨粗鬆症のリスクに寄与することがあります。
  • ホルモン変化
    女性の更年期や男性のホルモン減少が骨密度の低下に関与します。
  • 栄養不足
    カルシウムやビタミンDの不足は骨粗鬆症のリスクを高めます。
  • 喫煙と過度のアルコール摂取
    これらの習慣は骨粗鬆症のリスクを増加させます。

~骨粗鬆症の症状~

骨粗鬆症は初期段階では症状がほとんど現れません。
しかし、骨密度が低下し続けると、次のような症状が現れることがあります

  • 骨折
    特に腰椎、骨盤、脚の骨折が一般的です。
  • 身長の減少
    脊椎の骨折により、身長が縮んでいくことがあります。
    個人差にもよりますが、身長が4cm以上低くなります。
  • 姿勢の変化
    背中が丸まり、前かがみの姿勢ができやすくなります。

~骨粗鬆症の高齢者をサポートと治療方法~

高齢者が骨粗鬆症と診断された場合、適切なケアと生活スタイルの変更が必要です。ここでは、高齢者をサポートするための具体的な方法を紹介します。

薬物療法
薬物療法は、「カルシウム製剤」「活性型ビタミンD3製剤」「ビタミンK2製剤」などを用いると、
骨量(骨密度)が増えて骨が強くなります。他にも骨を強くする薬を注射することもあります。

食事療法
骨粗鬆症の予防や管理には特定の栄養素が重要です。
カルシウム(Calcium):カルシウムは骨の健康に不可欠な栄養素で、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚、大豆製品などが豊富に含んでいます。適切なカルシウムの摂取は骨密度をサポートし、骨粗鬆症の予防に役立ちます。

たんぱく質(Protein):肉、魚、大豆製品などが良質なたんぱく質の源です。たんぱく質は骨の組織をサポートし、修復に役立ちます。

ビタミンD(Vitamin D):ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の健康を促進します。ビタミンDは紫外線によって皮膚で生成されるため、日光浴が大切です。また、食事からの摂取源としてきくらげ、うなぎ、さんま、きのこなどがあります。

ビタミンK(Vitamin K):ビタミンKは骨のカルシウム代謝を調節し、骨密度の維持に寄与します。食事からのビタミンKの摂取源として納豆、ブロッコリーなどが挙げられます。

食事療法は骨粗鬆症の予防と管理において非常に重要です。バランスの取れた食事を心掛け、必要な栄養素を摂ることで、骨の健康をサポートすることができます。また、ビタミンD活性化のためには、適度な日光浴も忘れずに行うことが大切です。

適切な運動
骨を強化するための運動プログラムが重要です。
骨粗鬆症は早期に発見し、適切な治療と生活スタイルの変更を行うことで、骨折リスクを軽減することができます。定期的な健康チェックと医師の指導のもとで、高齢者は骨粗鬆症に対する適切な管理を行うことが大切です。

医師の診断とフォローアップ
まず、高齢者は定期的な医師の診断を受けるべきです。医師は骨密度測定などを通じて骨の健康状態を評価し、治療や管理計画を立てます。また、医師の指導に従い、処方薬やサプリメントを適切に摂ることが大切です。

安全な生活環境
高齢者の住環境を安全にし、転倒の危険性を減らすことが大切です。床や通路の障害物を取り除き、手すりや手すり付きの浴室などの設備を整えましょう。

サポートと理解
高齢者は骨粗鬆症と向き合う際にサポートと理解が必要です。家族や友人、地域のサポートネットワークが、心の健康と生活の質を向上させるのに役立ちます。感情的なサポートと共に、医療アポイントメントや薬の管理の手助けも提供しましょう。

教育と予防意識
高齢者とその家族は、骨粗鬆症の予防と管理についての教育を受けることが重要です。正しい知識を持つことで、リスクを最小限に抑え、健康な生活を送る手助けができます。

高齢者の骨粗鬆症は、適切なケアとサポートによって管理できる疾患です。医療プロフェッショナルと連携し、健康的な生活スタイルを維持することで、高齢者の骨の健康をサポートしましょう。